チャイコフスキーがまとめた組曲に、MY-Duoが語りを乗せて、音物語として、お届けしたストーリー。
くるみ割り人形は、原作である小説とバレエとで、少しお話がちがいます。
今回は、2017年、MY-Duoのクリスマスな演奏会でお届けした《くるみ割り人形》を文字でだけですがご紹介いたします。
ぜひ音楽を聴きながら、音読してください。
舞台はドイツ。
フランスで、バレエに翻訳された物語。
クリスマスの夜。
シュタールバウム博士の屋敷では、盛大なクリスマスパーティーが行われます。
人形師のドロッセルマイヤーは、この日のために、天使の自動人形を作りました。
クリスマスパーティーが始まり、ツリーのてっぺんに飾られた自動人形。ドロッセルマイヤーは言います。この自動人形はね、本物の天使を連れてくるんですよ。
ドロッセルマイヤーは、博士の娘クララとツリーを見に行きました。その瞬間ツリーのクリスタルが輝きはじめ、クララの目も輝きました。
気付くと、広間の人たちは止まっています。辺りを見回すと、優しく微笑む天使が現れて、優雅な舞を始めました。
広間の人たちは、何事もなかったかのように談笑しています。
クララが首を傾げていると、シュタールバウム博士と夫人が、子どもたちにプレゼントを配り始めました。
そしてダンスが始まり、子どもたちも、大人たちも、踊り始めます。
そのうちに、聖ニコラウスが現れて、子どもたちにお菓子を配ります。大人たちは気がつきません。今宵は、不思議なことがたくさん起こるようですね。
ドロッセルマイヤーの、魔法のショーが始まりました。次々に箱から飛び出す自動人形。楽しげに踊り始めます。自動人形が箱に戻ってしまうと、プレゼントのケーキが振る舞われました。
ドロッセルマイヤーはクララにプレゼントがあると言います。渡されたのは、くるみわり人形。クララはとても、気に入りました。
しかし、弟のフリッツは気に入りません。クララだけずるい! くるみわり人形を奪い取り、床に落とします。クララは慌てて拾い上げ、ドロッセルマイヤーが修理をしました。
クララはそっとくるみわり人形を抱き締めて、ドールハウスに寝かせました。
おやすみなさい、くるみわりさん。
そうして、クララも自分の部屋に帰りました。
もうすぐ 、真夜中。
パーティーが終わり静かになったお屋敷のどこからか、足音が聞こえてきます。
そう、クララがドールハウスを見に戻ってきたのです。
ベッドで眠るくるみわり人形に、クララは安心して、そっと抱き上げました。
そのとき、道化師の自動人形が表れて、「子どもは寝ている時間だ!」と脅しつけました。クララは慌てて逃げますが、道化師の自動人形は追いかけてきます。
時計が、12時の鐘を鳴らします。
クララが時計を見ると、なんと人形たちと同じくらい小さな、人形師のドロッセルマイヤーとおもちゃの兵隊たちが現れました。ドロッセルマイヤーはクララに魔法をかけます。すると、クララも人形のように縮んでしまいました。
どこかから、がさごそとねずみの大群が現れ、おもちゃの兵隊と戦い始めます。
くるみわり人形は、ねずみの王さまに一騎打ちを申し込みました。くるみわり人形は懸命に戦いますが、ねずみの王さまはなかなか倒せません。クララは、くるみわり人形が、負けてしまいそうな様子にたまらなくなり、履いていたスリッパを手に取り投げつけました。えい!
その瞬間、ねずみの王さまとねずみの大群は、ふっと、消えました。
クララが倒れているくるみわり人形を助け起こすと、なんとそこにいたのは美しい青年でした。クララの驚いた瞳に、くるみわり人形は自分が元の姿に戻っていることに気がつきました。お礼を言う青年に、クララはうっとりした表情で言います。あなたはだあれ? くるみわり人形だった青年は答えました。ハンス=ペーター・ドロッセルマイヤーです。
彼はなんと、人形師ドロッセルマイヤーの甥だったのです。あるときねずみの王さまに魔法をかけられて、くるみわり人形の姿にされてしまいました。クララがねずみの王さまを倒したので、元の姿に戻ったというわけです。
ハンスはクララに言いました。戻してくれたお礼に、あなたをお菓子の国へ招待します。
気づけば、辺りは雪野原。ハンスとクララはそりに乗り、お菓子の国へと向かいます。
お菓子の国では、こんぺいとうの精と王子さまが踊っていました。王子さまは、ハンスを見て驚きます。魔法が解けたんだね! ハンスはクララがねずみの王さまを倒してくれたのだと伝えました。すると、お菓子の国でも悪いねずみに困っていたので、王子さまは、ねずみを倒したクララにネックレスと勲章を与えました。そして、ハンスとクララは国賓としてもてなされます。
お菓子の精による踊りが始まりました。まずは、こんぺいとうの踊り。
そして、ロシアの踊り、トレパーク。
アラビアの踊りは、コーヒーです。
コーヒーの次は、中国の踊り、お茶。
そして、葦笛の踊り。パイのお菓子のミルリトン。
そして最後は、花のワルツ。甘い香りのバラの花。
シュタールバウム博士の屋敷は、とても静かです。広間に、クララを抱いたドロッセルマイヤーがやってきました。クララはよく眠っています。その様子を確認したドロッセルマイヤーは、時計のなかに帰っていきました。
クララは、十二時の鐘に起き上がり、ドールハウスの前にいきました。しかし、くるみ割り人形がいません。どうしたのでしょう。そういえば、ねずみの王さまを倒して、お菓子の国にいって、なんだか素敵な夢を見た……。
思わずクララは部屋を飛び出します。ふと窓の外を見ると、こちらにやってくる青年の姿がありました。訪ねてきた青年は、人形師ドロッセルマイヤーの仕事場の住所を見せて、どこにあるのか教えてほしいと言いました。場所を教えるクララに、青年は風邪をひきますよ、と自分の羽織っていたマントをそっとかけました。なぜかしら、この人を知っている気がする。しかし青年は、ありがとう、というと、去っていきました。
クララは勢いで飛び出してきたものの、部屋の外は寒く、マントをきつく羽織り直しました。そのとき、胸にネックレスが輝いていることに気がつきました。これは……そうです、お菓子の国でもらったネックレス。そういえば、さっきの青年の勲章は、お菓子の国でハンスがもらったもの。
夢じゃなかったんだわ!
(語り : 中川麻友子)
夢いっぱいのクリスマス。
いつか再演したいプログラムです。
機会がありましたらぜひお付き合いください。
※転載、転用禁止
📚参考書籍

クルミわりとネズミの王さま (岩波少年文庫)

くるみわり人形 クラシックバレエおひめさま物語
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